特集 看護教育と代替/補完療法―臨床・教育でどう実践されているか
音楽運動療法から看護音楽療法へ
川島 みどり
1
1健和会臨床看護学研究所
pp.661-665
発行日 1999年8月25日
Published Date 1999/8/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663903842
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はじめに
下町の小さなデイケア室.月に2回の土曜日の昼過ぎからピアノの音色が響き始める.小窓からちょっと覗いてみよう.部屋の中央にしつらえたトランポリン上に,スエットの上下を着たポニーテールの若い女性とかなり上背の初老の男性.両手をしっかりと握り合い見つめ合って飛んでいる.時に上がる歓声は,トランポリンの四辺を両手で弾ませている看護婦たちの声である.あのトランポリン上の彼女も看護婦.身体のふらつきがあって直立位の取りにくいパーキンソン病の患者の安全を保持しつつ,両足を踏ん張って上下運動に身を任せている.ピアニストは,後ろの動きに合わせて振り向きながら鍵盤を叩いている.
3年前から始めたこのセッションの主な対象は,当デイケア室のある病院の,神経内科受診中のパーキンソン病の患者さんらと,評判を聞きつけて遠く千葉県の方から電車を乗り継いで通ってくる人たちである.始めたばかりの頃は,正直なところ,行う側も受ける側もその効果については半信半疑で,手探りとも言うべき状態がしばらく続いたが,3年を経過するなかで,理論面でも実践面でも多くのヒントを得た.
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