The Japanese Journal of Physical Therapy and Occupational Therapy
Volume 9, Issue 12
(December 1975)
Japanese
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はじめに
音楽は,歴史的に振り返ってみても,たえず人の生活と密着している.音楽は,身体の躍動のあらわれであり又人のこころの表現である.それは,病をいやす魔術士を催眠状態にさせたり,踊り手の柔軟性のある筋肉をしげきしたり,闘志を興奮させたりしてきた.音楽は,我々のこころのイメージとなり,又我々の気待ちのなかに深く広く浸透していく.そんな音楽が治療的な意味合いで使用されてきた歴史もまた古い.ダビデのハープの話を伝える旧約聖書から現代の研究発表に至るまでの様々な文献が,音楽の治療的効果をさまざまなかたちで示している.
最近音楽療法は,多くの人の興味と関心をひいており,実際に治療面で音楽が様々なかたちで使われている.
音楽療法は,簡単にいってしまえば,何らかのかたちで治療過程において音楽を使うことであろう.作業療法における作業の存在と似ている.しかし,音楽には作業療法でしばしば使われている活動種目にはないユニークな特長があり,それがために音楽療法の独自性が出てくる.
何らかのかたちで音楽を治療に使うということであるが,ここで問題になるのは,治療者というかその音楽を使うものの構えと,いかに音楽そのものが音楽療法の実際の場面で対象者にとって生きてくるかということである.
治療者としての構えは,重要な問題であるけれど,治療にたずさわるどの分野の治療者にも共通したことなので,この紙面ではとりあげない.ただ,その人が音楽活動を用いることでは,基本的な治療者としてのかまえに加えて,音楽に対する理解,音楽を自由にあやつる能力,対象者に生々した真に満足の出来る音楽的経験をしうる機会を作る能力の必要性が出てくる.
この紙面では,音楽がいかにその対象者にとって生きた経験になり得るかということを,シアーズの音楽療法原理を紹介することによって,表わしたい.そこに音楽のユニークさも表現されてくるのである.
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