連載 買いたい新書
向けられた“眼差し”に私たちは何を返せるのだろうか―[写真集]おそれずに人生を
三田 優子
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1愛知県コロニー発達障害研究所社会福祉学部
pp.468-469
発行日 1994年5月1日
Published Date 1994/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661904548
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エイズはもはや他国の問題とか,他人ごととか言っている状況ではない.しかしながらエイズについて私たちはどれほどのことを知っているだろう.どんな病気で,感染経路は何で,エイズ抗体検査を受けるにはどうしたらよいか,また感染者や患者とどう接したらよいか,と聞かれたらあなたはどう答えるだろうか.
一方,我が国のエイズをめぐる状況はというと,若年層を含め,全年齢層に感染が広がっていると推測され,ここ数年のうちにアジアではタイに続いて日本で感染爆発が起こるとさえ言われている.にもかかわらず,来日した感染者の宿泊を拒否したホテルの話が耳に入ってきたり,感染したために職場を追われたり,と,ひと頃の米国に見られたパニックやトラブルが,日本にも起こりつつあるようだ.無知と偏見から引き起こされるパニックやトラブルの影響は,当事者のみならず社会全体にとってマイナスであることは明白である.それなのに私たちは,エイズか非常に身近な問題で,誰にでも起こり得ることをなかなか認めようとはしないで,また米国やタイの経験を生かそうともせず,何をぐずぐずしているのだろうか.
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