フロントライン 2002 遺伝看護
多因子遺伝疾患の基礎知識と看護の課題—孤発性パーキンソン病を例として
藤井 千枝子
1
,
原田 勝二
2
1慶應義塾大学看護医療学部
2筑波大学社会医学系
pp.645-652
発行日 2002年7月1日
Published Date 2002/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661904002
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はじめに
人のDNAを構成する塩基配列は約30億対からなる.塩基は,C(シトシン),G(グアニン),A(アデニン),T(チミン)のいずれかであり,CとG,AとTの組み合わせで相補的に情報を複製している.遺伝情報の流れは,DNAのRNAへの転写とRNAのタンパク質への翻訳である.アミノ酸は塩基3つの組み合わせであり,伝令RNAの遺伝暗号表に示される.タンパク質はいくつかのアミノ酸の組み合わせである.塩基配列には個人差があり,人々の多様性を創りだしている.
近年,単一遺伝疾患の発見のほか,DNAチップにより一度に大量の遺伝子解析が可能となり,多因子遺伝疾患に関する知見も明らかになりつつある.single nucleotide polymorphism(s)(SNP,SNPs;単一ヌクレオチド多型)とは,1塩基の違いを指す.ある集団の1%以上の特定の遺伝子上に2つ以上の表現型をもたらす1塩基の違いをもつ時に,一遺伝子多型と呼ぶ.塩基1つの違いにより,ある遺伝子を構成するアミノ酸が置き換わり遺伝子の働きに変化がおこる.置き換わったアミノ酸が終止コドンである場合は,翻訳が終止となる.アミノ酸の置換がおこった場合,個人の薬物感受性や罹患したウイルスに対する抵抗性に個人差が想定されるため,個人の遺伝情報に適合した治療,すなわちオーダーメイド治療の確立が期待されている.
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