フロントライン 2002 理論
“視点の交換”が支える医療・福祉の連携—フランス・制度論の日本での応用
三脇 康生
1,2
1名古屋芸術大学短期大学部
2湖南病院精神科
pp.653-657
発行日 2002年7月1日
Published Date 2002/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661904003
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私立病院中心の日本の精神医療は,他の先進国と比べて入院期間が長く,とじ込めの場所として機能してきたきらいがある.そのような場所である病院から,できるだけ早く患者を退院させ,地域社会に復帰させようとしたのが脱施設化運動であり,これは短期人院とアフターケアシステムの構築という方向に向かうものである.一方,病院はそれでも存在するから,できるだけ患者の立場に立った,やわらかで家族のような関係性に基づいた施設作りを目指したものが治療共同体運動である.いずれにしても,日本では病院の内と外は分けて考えられてきており,福祉的な機能は病院の外,あるいは治療共同体のなかに独立乙して存在してきた.
一方,フランスでは病院と地域でのサポートを連続させる取り組みがなされてきた.1人の患者が病院から病院外施設に移ると,看護スタッフは病院外施設に訪問する.結果的に,1人のスタッフが1つの施設ではなく,複数の施設で働くことになり,不完全ながらもローテーションシステムが機能している.このローテーションのなかで生じる「考え方,ものの見方,視点の交換」を方法論化したものが「制度論」であり,フランスの精神医療における福祉的側面を治療や病院から分化させず,やわらかなものとして機能させている方法論なのである.
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