2001フロントライン 看護研究
看護学とライフヒストリー
河津 芳子
1
1名古屋大学医学部保健学科
pp.629-636
発行日 2001年7月1日
Published Date 2001/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661903772
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- サイト内被引用
はじめに
生活史(life history)研究は,おもに社会学の領域で行なわれてきた研究法で,日本では,中野卓の「口述の生活史-或る女の愛と呪いの日本近代(1977年)」1)以後,その方法論的研究も含めて盛んになってきている研究法である.
これまでの生活史研究のなかには,看護の領域に関連するもの,たとえば,助産婦という職業を女性の自立の観点から取り上げたものがある2〜6)が,いずれも社会学者の立場から行なわれた研究で,看護学の立場から取り組んだ研究は見あたらなかった.そうしたなかで,私は中野の指導を受け生活史法を援用し,成人病患者の病気対処行動が個人の生活史のなかで体験してきた自分自身や身近な人の病気への思いからできたイメージと関係していることを明らかにしたり7),平凡なひとりの看護者から見た精神科看護史のひとこまを描き川す8)ことを試みてきた.その後,最近になって,看護学領域で生活史法を用いた研究がほかにも見られるようになってきている9,10).それらの成果と自分自身の経験を踏まえて,看護学の領域における生活史法の意義について若干の私見を述べたいと思う.
Copyright © 2001, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.