2001フロントライン 老人看護
高齢者における口腔・咽頭部の嚥下困難への対処方法—入所施設におけるケアの基本と看護計画
Andrea S. Schreiner
1
,
守本 とも子
1
1広島国際大学保健医療学部看護学科
pp.637-645
発行日 2001年7月1日
Published Date 2001/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661903773
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はじめに
呼吸,言語の発声,食物の摂取という基本的で必要欠くべからざる作業には,骨,筋肉,神経の複雑なシステムを必要とする.
摂取した食物を嚥下する過程には,40以上の筋肉が関係するが,高齢者には,嚥下障害が比較的多く見られる.嚥下障害の原疾患には,脳卒中などの中枢性の問題に起因するもの,筋萎縮性側索硬化症などの進行性疾患によるものなどがある.また,咽頭期反射惹起性の低下,嚥下—呼吸協調性の低下,安静時の喉頭低位,唾液分泌低下,咳そう反射低下,薬物使用といった問題があげられる.脳卒中によって,嚥下機能を司る脳の中央部と神経に損傷が及ぶ可能性がある.脳卒中による損傷は,嚥下過程のさまざまな段階に影響を与え,問題を発生させる.たとえば,咀噛や食塊形成に問題がある人は,口の中に食物を保持することができない.口の奥に障害があれば,喉に到達した食塊を制御できないこともある.その場合,喉で食物が止まり,食道のかわりに喉頭に人ってしまう.嚥下中に筋肉が咽頭を締め付けなければ,食物が喉に残留することがある.食道上部括約筋を開ける機能を持つ筋肉が損傷を受けると,不完全な開きしか得られず誤嚥の危険性が高まる.
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