特集 病みの軌跡と回復
がんとともに生ある限り自分らしく生きる—新たなコントロール感覚を取りもどすために
今泉 郷子
1
1川崎市立看護短期大学
pp.814-817
発行日 2000年9月1日
Published Date 2000/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661903545
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がん患者というレッテル
がんはその治療に長い時間を要する病である.早期に発見されても,その後長期にわたり再発への不安は拭いきれない.また,不幸にも治癒できず,死に至る場合も多い,がん患者は,治療にかかる長い時のなかで,さまざまな苦悩を体験している.死の恐怖,治療による副作用,がんそのものによる激しい痛み.そして,がん患者であるということに.
O氏は,「がんになったことを誰にも知られたくない,周りから哀れまれたくない」と,自らの病気を否定するかのように語った.H氏は,がんになったことを会社に隠そうと必死になっていた.一から作り上げてきた仕事を辞めざるを得なくなったK氏は,「悔しいよ……」と声を詰まらせた.W氏は「体がやせてしまい,みっともない……こんな体は自分じゃない」と悲しそうに語った.
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