特集 病みの軌跡と回復
機能訓練プログラムの終わりと回復過程の長い旅路の始まり—脳血管障害者の運動習慣の意味の変化
末永 由理
1
1川崎市立看護短期大学
pp.800-804
発行日 2000年9月1日
Published Date 2000/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661903542
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はじめに
脳血管疾患は中枢神経の病変であり,運動機能や言語機能,精神機能の障害をもたらす.また,その発症は突然であることが多く,脳血管障害者の生活は発症前とは一変する.酒井郁子1)は脳血管障害者の闘病記を分析し,発症から社会復帰までの立ち直りの過程における共通体験について明らかにした.それは患者は「生き延びる」思いを感じたのち,「困難の自覚」や「回復の自覚」をして「生命感情の復活」がおこり,病院から家,あるいは社会という「外に出る」ことで「壁にぶつかる」体験をし,「継続性の断絶」を感じ,「人生の底をのぞく」体験をする.やがて「転回」が訪れ,「自分探し」や「自分を許す」ことで「ゆるくなる」.そして「障害とともにある」自分を感じ,「生きなおす」ようになる.
この研究では脳血管障害者の体験に影響する要因については明らかにされていない.パトリシア・ベナー2)は病気という体験はあくまでも個人的なものであり,一見同じようにみえる損傷でも,回復の可能性は個人個人で大きく違うので,患者が病気をどのように体験しているかを理解することが看護の方向性を考えるうえで必要だと述べている.脳血管疾患によって運動機能は大きな障害を受けることから,脳血管障害者の回復過程には運動機能の変化が影響すると考えられる.急性期を脱した脳血管障害者には,残存する運動機能の強化や障害された運動機能の回復の促進を目的とした機能訓練が行なわれる.
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