連載 驚きの「介護民俗学」・7
とことんつきあい、とことん記録する
六車 由実
pp.80-87
発行日 2010年10月1日
Published Date 2010/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661101705
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ハルさんの言葉を理解したい
香川ハルさん、大正10年生まれ。アルツハイマー型認知症が進行しつつある。
デイサービスの利用者であるハルさんは、昨年の5月に私が施設に就職したときから既に日常会話が成り立たず、日に何度も家に帰ろうと徘徊を繰り返すことがあり、不穏な利用者として職員の手を煩わせていた。他の利用者さんから、「あの人また立って外へ歩いていったよ」と教えられて初めてハルさんが席にいないことに気づき、施設内を必死で探しまわってなんとか連れ戻すということもあった。私の頭にも不穏な利用者さんというイメージだけで印象づけられていて、ハルさんのことをそれ以上に理解しようとはしなかったし、理解できる対象とは考えていなかった。
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