書評
ライブ講義 質的研究とは何か―SCQRMベーシック編/SCQRMアドバンス編
斎藤 清二
1
1富山大学保健管理センター
pp.786-787
発行日 2008年9月1日
Published Date 2008/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661101322
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医療における研究の意味とは?
評者(斎藤)は医療現場に身を置くものの一人として,「医療における研究とは,いったいなんであるのか?」という疑問を長い間抱き続けてきた.医療が「苦しむ患者を援助したいと願う医療者が行なう実践」であるならば,医療における研究とは,その実践現場において刻々と体験される現象を的確に説明し,ある程度の予測を可能にし,医療実践そのものに新しい意味を付与するような知の創造を目ざすものでなければならない.しかし,従来の客観主義的・仮説検証的な研究法は,医療の主観的・相互交流的側面を適切に扱うことができず,上述の目的に十分応えるものではなかった.
近年,医療・医学においても急速に普及してきた「質的研究法」は,上記の目的の追求に益する,現場に密着した研究法としておおいに期待されるものである.元来,質的研究法は看護領域での発展が著しい.このことは,最も有名な質的研究法であるグラウンデッド・セオリー・アプローチ(GTA)が,そもそも看護学領域で創設され発展してきたということからもわかる.しかし一方で「そもそも質的研究とは何か?」「質的研究で何がわかるのか?」「質的研究は科学性を担保できるのか?」といった疑問に対して明確な回答がなされることは少なかった.特に研究の初心者にとって,「質的研究の実際」を学びつつ,上記のような質的研究の原理的な問題についても同時に理解することは至難の技であったと言える.
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