解説
Population based researchの実践
鈴木 一夫
1
Kazuo Suzuki
1
1秋田県立脳血管研究センター疫学研究部
pp.56-57
発行日 2008年1月1日
Published Date 2008/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661101186
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はじめに
Population based researchが,「地域集団を対象とする研究」を意味するものとすれば,そこに新しさを見いだす人はあまりいないだろう.疫学研究は,個人より集団を相手にその集団特性を明らかにすることを伝統的に行なってきたものであり,疫学の考え方はpopulation based researchそのもの,ということになる.しかし,ここに看護の視点が加わると話は簡単ではない.看護は基本的に個人を対象とし,「疾病予備群」の予防的活動であっても個にかかわることによって危険因子の改善を行なうものであるからだ.
High risk strategy(高危険群に介入する対策)は集団全体の危険因子を排除しようとするpopulation strategyと対極を成すものである.医療的治療は基本的に早期発見早期治療が重要でありhigh risk strategyの典型といえる.看護は臨床医療に必須な要素であるが,そこにはhigh risk strategyだけでなく,population strategyが求められるものと思われる.ここでは,この視点に立ち,発症者の多くが介護を必要とするような後遺症を残し,常に合併症や再発の予防に努めなければならない脳卒中を疫学的に解析し,看護における「Population based researchの実践」を考えていく.
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