連載 HIV/AIDSケア 再考・8
看護はHIV/AIDSの就労にどうかかわるのか/[コラム]障害者の就労支援
若林 チヒロ
1
,
上野 伸子
2
1埼玉県立大学保健医療福祉学部健康開発学科
2東京都心身障害者福祉センター地域支援課就労支援係
pp.1044-1049
発行日 2007年11月1日
Published Date 2007/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661101136
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なぜHIVで就労が問題なのか
治療法の進歩で余命が延長
1990年代後半以降HIV感染症の治療は進歩し,HIV陽性者の多くは寿命をまっとうできる可能性が広がりました.このことは,定期的な通院や服薬といったHIV感染症の健康管理を日常生活で行ないながら,家庭や地域で社会生活を送ることができるようになったことを意味しています.糖尿病やC型肝炎などと同じように,HIV感染症も疾患を管理しながら通常の社会生活を送る「慢性疾患」となったといえるでしょう.
かつて,陽性者はいつエイズを発症するかわからず,自分の余命は5年から長くてもせいぜい10年と思って生活していました.大部分の陽性者は自分の将来を短く区切って人生設計を立てており,結婚や出産をあきらめ,職業上のキャリア形成も長期では考えにくかった人が多いでしょう.体調に無理をして働くよりも,自分の健康や生活を優先できる職場へと転職した人もいました.それが治療の急激な進歩により陽性者の人生は一変し,長期的な人生設計のなかで就労の重みが増しているのです.
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