特集 眠らなければ始まらない! 睡眠と看護師の健康について考える
交替勤務下での睡眠―業務と健康維持の両立のために
若村 智子
1
1京都大学大学院医学研究科人間健康科学系専攻
pp.800-805
発行日 2007年9月1日
Published Date 2007/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661101070
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はじめに
看護は24時間体制で患者にケアしている.そのため患者が覚醒している時間帯に業務が集中しやすい他の医療職と比較して健康維持において異なる対応が求められている.しかし,現実にはそれぞれの経験の蓄積のみに基づいて,三交代勤務や二交代勤務に就いているといっても過言ではない.と言うのも,私が担当している4回生対象の卒論ゼミでは,生体リズムの知識に基づく研究を毎年行なうことが多いのだが,学生が「こんなに看護師の勤務に深く関与する知識なのに,在学中の講義では習わなかった」という声をよく耳にするのである.
このような実態は,私の勤務校に限ったことではないだろう.なぜなら,わが国の医学教育でもまだ睡眠学に関する講義は正規には開始されていないのが実情だからである.一方で最近,アメリカの医学部では医師に対しての睡眠学の講義が開始されているのである.
私は勤務する大学で文系~理系の全学部生を対象に「生体リズムと健康」といういわゆる教養科目に相当する講義を開講している.この科目を履修する臨床経験のある看護学専攻の編入生たちから,臨床看護師の当時に生体リズムの視点で患者をとらえることができたらもっと異なるケアができたのではないかというコメントが寄せられている.シフトワークについての講義を行なった後では,実際の勤務中の疲労感や,勤務体制に関する実感を熱く語る学生が多い.このことからも,多くの看護師は,直接身にふりかかる交代勤務に関して,その基礎となる重要な生理学の知識が乏しい状況で勤務しているのではないかと疑わざるを得ない.
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