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プロローグ
「構造構成主義」というコトバをご存知の読者はいらっしゃいますか? 西條1)によって提唱されてからまだ2年なので,多くの人はご存知でないと思います.「主義」と聞くだけで,「そんな難しいことはわからない」と敬遠したくなる人もいると思いますが,それは早計というもの.構造構成主義は,さまざまな領域の難問を解消し,潜在能力をうまく開花させるためのツールであり,医療・看護領域でも大きな力を発揮できるポテンシャルを持つ超メタ理論です.実際,たった2年で,医学,看護,リハビリテーション,障害論,QOL理論,作業療法,理学療法,心理療法,認知症アプローチ,統計学,質的研究法,発達研究法,知覚研究法,歴史学,政治学,教育学,哲学,古武術など,実に多くの領域に応用されており,最近では,東洋医学,社会学,芸術論などでも注目されつつあります.もし,構造構成主義が「ムズカシイ」だけで役に立たない机上の空論ならば,「構造構成主義ムーブメント」とでもいうべき現在の状況は起こらなかったでしょう.
僕自身は,構造構成主義を医療界に応用したいくつかの諸理論2-6)を発表してきました.本論では,その中でも「構造構成的医療論(Structure-Construction Health Care,以下SCHC)」7)をご紹介したいと思います.SCHCの基本コンセプトはいたってシンプル.一言で表せば,SCHCとは,医療におけるさまざまな難問を構造上解消させたうえで,多様なアプローチを柔軟に組み合わせて活用し,しかもそれらの効力をうまく引き出していく,というものです.SCHCの理論的射程は遠大で,現存する医療だけでなく,いまだ知りえない医療に対しても妥当する理路を提供しています7).当然,SCHCは看護に深く関わるテーマも取り扱います.本論を通して,看護に構造構成主義を応用するヒントやコツをつかんでいただければと思います.
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