連載 わかるようでわからない精神科のコトバ・18【最終回】
変質者
風野 春樹
1
1精神科医師
pp.796-797
発行日 2003年8月1日
Published Date 2003/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661100976
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「変質者」と聞いて,まずどんなイメージを思い浮かべるでしょうか.誰もが連想するのは,人通りの少ない路上に出没していきなり下半身を露出したり少女にいたずらしたりする性犯罪者,といった姿でしょう.「痴漢」ならば普段はごく普通のサラリーマンをしていてもいいけれど,「変質者」はおそらく普段から変質者で,幼い子どもを求めて路上を徘徊している,といったイメージがあります.
しかし,それでは変質者はいったい何が変質しているのか,変質とはいったいどういうことなのか,と訊かれると,答えられる人は少ないのではないでしょうか.
実をいうと,「変質者」という言葉は,今ではすっかり日常語のような顔をしているけれど,実はきわめて由緒正しい精神医学用語なのです.その歴史はなんと150年.「統合失調症(精神分裂病)」などより,はるかに古い言葉です.「変質者」という用語は,19世紀のヨーロッパで大ブームを巻き起こしたある理論の名残りなのです.
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