連載 疾病対策の構造
高齢の変質
倉科 周介
1
1東京都立衛生研究所
pp.640-643
発行日 1995年9月15日
Published Date 1995/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401901343
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
わが国では,社会と病気の角逐は前者の有利に展開してきた.このシリーズの冒頭でも言及したが,平均寿命が世界の首位に立ったという事実は,その何よりの証明である.他の諸国でも,社会構造が曲がりなりにも維持されて発展を続ける限り,こうした傾向は同様だと考えてよい.逆に社会構造が解体したらどうなるか.その実例をわれわれはソ連邦崩壊後のロシアに見ている.平均寿命の伸びは停滞し,さらには短縮する懸念もあると伝えられる.ちょうど半世紀の昔,わが国もロシアに酷似する状況からの再出発を強いられた.現状を絶頂とみて,きたるべき世紀の暗雲を予言する向きもある.死の質の変貌の足どりを追って,将来を考えることにする.
Copyright © 1995, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.