文献抄録
咳を科学的に分析して診断に役立てる/変質したテトラサイクリンの服用は危険—ファンコニー症候群を惹起する
浦田 卓
pp.262-263
発行日 1966年2月10日
Published Date 1966/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402201192
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はじめに:
咳は古くから実地医家になじみの深い自覚症状の一つである。咳の音響学的な性質を分析して,あるいは咳のさまざまな性質に病歴や理学所見を組合せて,主として呼吸器の病気の診断に役立てようと,先人は努力してきた。たとえば,犬の吠えるような咳は喉頭ジフテリアまたは仮性クルップを疑えとか,深い湿つた咳は肺炎を,気の抜けたような乾咳が長くつづくのは初期の肺結核を,そもそもの初めから膿性痰をともなう深い咳は気管支拡張を,また40歳を過ぎた人がいつもと違つた咳を数週間もつづければいちおう気管支ガンを疑え,などというのがそれである。また心因性の咳はすべての咳のうち2〜4%を占めるとか,後鼻腔の鼻汁も咳の原因になることが多いとかいうのも,咳に関する臨床的知識の一部である。
しかし,以上は科学的データというには,余りにもお粗末である。むしろ,臨床診断のコツとでもいうべきカテゴリーに属するといつた方がよいようである。
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