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はじめに
褥瘡発生は仙骨部にもっとも多く,ブレーデンスケールでも表わされるように,寝たきり患者にリスクが高いとされている1).そのため,褥瘡予防として用いる減圧用品の多くは,水平仰臥位時の仙骨部の接触圧を基準につくられている.また,減圧用品だけでなく2時間毎の体位変換など現在基準化されている褥瘡予防ケアプログラムにおいても,仙骨部,つまり水平仰臥位時を中心に立案されている.
当院においては,1998(平成10)年度からスキンケア検討会を通して院内での褥瘡発生原因のアセスメントや,予防ケア方法の検討を行なってきた.そして,ブレーデンスケールでリスクアセスメントし,知覚の認知や活動性,可動性の点数結果の低い順に高機能の減圧用品を選択していた.しかし,1999(平成11)年度に発生した褥瘡はファーラ位で圧迫を受ける尾骨部にもっとも多くみられ,今まで報告されてきた内容とは異なり,寝たきり患者ではなくベッドから離れることのできる離床期の患者に多く発生していた.また,仙骨部がもっとも多いという先入観が影響して尾骨部褥瘡のうち92%は仙骨部と報告されていた2).
寝たきり患者を対象にした仙骨部への褥瘡予防方法が確立し,それが可能になってきたのに比べて,尾骨部つまりファーラ位で発生する褥瘡の予防には今まで焦点があてられてこなかったと考える.その背景には,ファーラ位時の骨突起部位が不明確で,仙骨部と尾骨部を混同するという間違いに加え,褥瘡は寝たきり患者に多いという医療者の認識も作用したのではないかと思われる.しかし,ファーラ位は離床期の患者だけでなく,経管栄養を受ける患者や呼吸機能低下の患者などに必要な,療養生活上避けることのできない体位の1つであり,水平仰臥位時とは区別した褥瘡予防が必要となる.
本稿では,褥瘡予防の中でも体位によって予防方法を区別する必要のある体圧分散を中心に,当院で行なったギャッチアップ時における減圧用品別の接触圧変動に関する研究結果をもとに,ファーラ位(ギャッチアップ時)の褥瘡予防方法について述べる.
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