- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
60代の肥満ぎみの外国人男性が,担架で救急治療室に運ばれてきました.酸素マスクをつけ,胸をおさえています.
CASE-1
Nurse:Can you hear me? (Man does not speak, but nods his head “yes”.)
Nurse:I'm Nurse Suzuki. The doctor is going to look after you right away. Can you breathe alright?
Man:(in strained voice)...very hard.
Nurse:Do you have pain?
Man:(The man nods“yes”and runs his right hand under his jaw, down his throat and to the center of his chest.) My heart...nitroglycerin!
Nurse:Have you had angina before? (Man nods “yes”.) The doctor will be here right away to look after you.
Man:(Straining to speak) You look after me!
解説
心臓発作のような救急事態に陥ると,誰でも,恐ろしく感じるものです.さらにそれが,その国の言葉が話せなかったり,病院のスタッフが自分の状態をきちんと把握できるかわからない外国人の患者さんの場合,その不安の大きさは想像にかたくありません.
ケース1の患者さんは,ニトログリセリンを欲しがっていることから,アンギナ(狭心症)の病歴があり,またこの症状のために,医師にかかった経験があることが想像できます.自国にいる主治医や病院で定期的に治療を受けることに慣れている人にとって,日本で受けるであろう未知の治療は,その良し悪しに関係なく,不安に思うものです.
もちろん生きるか死ぬか,という救急事態のとき,ヘルスケアシステムに対する満足感のことなんて言っていられませんし,またそんな事態のとき最高のケアを受けたとしても,幸せに感じる余裕のある患者さんなんていないでしょう.しかし,患者さんの不安を軽減し,少しでも相手の期待に応じるように努めることは大切なことだと思います.
ケース1で,ナースはまず,自分の立場と名前を伝えることにより,自分が誰なのか,を明確にしました.このナースの話しかけは,とても良いと思います.これによって患者さんは,どこの誰かもわからない人に付き添われるよりも落ち着くでしょう.しかしナースが,症状や病歴について質問し始めてから,患者さんの期待と実際の対応とに,ズレが出てきたようです.
Copyright © 2003, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.