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はじめに
私は今院内の嚥下担当看護師として,さまざまな職種のスタッフとともに摂食・嚥下障害治療に携わっています.そんななか,長期にステロイドを内服し免疫力が低下した患者様が,球麻痺による重度嚥下障害となった症例を経験しました.主治医からは「気管切開も踏まえたうえでの治療になるかもしれません」と診断され,栄養管理は中心静脈栄養での管理で,経口からの食事などはもちろんできない方でした.
嚥下障害患者様の場合,肺炎を起こすことなく看護をするのは重要な課題です.そのような患者様が,徹底した口腔ケアを中心にしたさまざまな感染予防の看護と,気管切開をせずに夜間の持続唾液吸引器を工夫して使用し,間欠的口腔食道経管栄養法(以下OE法)を経て,経口摂取のみの栄養管理まで改善しました.
本人の食事に対する満足も得られ,自宅に退院することができたので,この方に対する取り組みについて報告します.
患者紹介
67歳女性,自宅は旅館を経営しており,56歳から関節リウマチの治療中で長期にステロイドを内服していました.
現病歴
2005(平成17)年9月26日,悪心とめまいでT病院を救急受診し,延髄左外側梗塞,小脳梗塞と診断され入院.発症時から嚥下が困難で絶飲食となり,発症18日からは中心静脈栄養になりました.また,小脳梗塞により体幹バランスも悪く歩行不能でした.
発症28日で,当院回復期病棟に嚥下障害と日常生活動作(ADL)拡大のための訓練目的で,転院してきました.
入院時検査と診断
胸部単純写真:両側下肺野に肺炎.
嚥下造影(以下VF):左食道入口部開大不全が著明で喉頭挙上はかなり弱い状態.
嚥下内視鏡(以下VE):左声帯は正中で固定.咽頭収縮は弱く,多量の唾液が残留し唾液の持続的誤嚥を認めました.
感染予防には気管切開を要する可能性もあると診断されましたが,病状説明の結果,本人は気管切開や手術など体にメスが入ることを強く拒否したため保存的治療の方針となりました.
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