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シェーグレン症候群は,唾液腺や涙腺などの外分泌腺が障害を受けることによって引き起こされる口腔や眼などの乾燥を主徴とする臓器特異的自己免疫疾患である.更年期前後の女性に多く発症し,日本に約50万人の患者がいると推定されている.また,本症候群は自己抗体産生や多彩な全身性病変を発症する全身性自己免疫疾患としての特徴をあわせ持ち,一部の患者では悪性リンパ腫などが発症するためにリンパ増殖性病変とも考えられている.
原因と発症機序
本症候群をはじめとして自己免疫疾患の原因や発症機序はまだ解明されていないが,遺伝や環境といった複数の因子が関与していると考えられている.遺伝因子としては,本症候群の発症と主要組織適合抗原との間に強い相関がみられている.また,多くの自己免疫疾患と同様にほとんどの患者が女性であるため,X染色体上の遺伝子や性ホルモン,さらに最近では母親の体内に胎児由来のリンパ球が生存するマイクロキメリズムが本症候群の発症にかかわっている可能性が報告されている.環境因子としては,レトロウイルス(ヒト成人T細胞白血病ウイルス,C型肝炎ウイルスなど)やヘルペス群ウイルス(Epstein-Barr ウイルス,サイトメガロウイルスなど)の感染が,本症候群を引き起こすのではないかと注目されている.
いずれにしても,本症候群では免疫調節機能の異常により自己免疫反応が十分に抑制できず,まずはじめにT細胞が外分泌腺に浸潤し,外分泌腺に共通の何らかの自己抗原を認識して障害を引き起こすと考えられている.さらに進展すると,一部の外分泌腺にはB細胞の集積もみられるようになり,自己抗体の産生や悪性リンパ腫の発症につながり,リンパ増殖性病変としての性格を示すようになると推察されている.
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