特集 口腔乾燥症のWhy&How
口腔乾燥の基礎知識
口腔乾燥の原因薬剤
永田 亜矢
1
,
梅末 芳彦
1
1フジ薬局
pp.1161-1167
発行日 2003年12月1日
Published Date 2003/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661100831
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口腔乾燥を引き起こす可能性のある薬物は,これまで多数報告されているが,口腔乾燥は,薬品の添付文書等の「副作用」の項目に,「口渇(こうかつ)」という用語で記載されている.すべての薬剤の作用機序が明らかになっているわけではなく,口腔乾燥の発現する確率も多いもので20-30%と,それほど多いとはいえない.しかし,これらの薬の重複した処方や,頻繁な薬物療法が口腔乾燥を引き起こす可能性がある.また,投与薬剤の種類が増えると,口腔乾燥が発症しやすくなる傾向がある.
唾液の分泌
正常成人の唾液は1日1-1.5L分泌されるといわれている.唾液の分泌は,自律神経(交感神経と副交感神経)によって支配されている.この2つの神経は,同じ神経の興奮であっても,それぞれ相反する反応を示すが,ともに唾液の分泌を促進するように働くという特徴がある.ただし,神経の刺激によって分泌される唾液の性質に違いがある(表1).
交感神経の刺激ではノルアドレナリンが働き,少量の粘液に富む分泌を起こす.副交感神経刺激では,アセチルコリンなどの働きにより粘りのない唾液の分泌が著しく増す.すなわち,自律神経を抑える作用をもつ薬物は唾液の分泌も抑え,口腔乾燥を引き起こす.たとえば,消化性潰瘍の治療に胃酸の分泌や胃腸の運動を抑える目的で抗コリン薬を投与すると,唾液腺の唾液分泌も抑制されて口腔乾燥が生じることになる.
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