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小児救急医療の現状
子どもと家族の実態
少子化・核家族化に伴い,育児不安を抱えている親は多く,特に子どもの急な病気や怪我に遭遇した場合,親の不安はさらに強まる.幼稚園に通う子どもの保護者の8割以上が,子どもの急病や怪我で夜間や休日に医療機関を受診したことがある(田中ほか,1996)1)が,約8割の親は小児救急医療体制に対して不安があると答えている(梶山,2002)2).
夜間や休日に医療機関を受診する子どもの7割以上が,発熱を主訴とした軽症例であり,6歳以下の乳幼児がほとんどである(梶山,2002)2).小児の救急患者数は,施設の受け入れ状況により大きな差がみられる.一次救急医療施設では全救急患者の60-70%が小児の患者で占められているが,二次,三次施設においては20-40%と一次施設に比べるとその比率は減少する(上野ほか,1997)3).また,年齢により疾患にも特徴がみられ,6歳以上の学童では気管支喘息が多くなっている.全体では上気道炎がもっとも多く,気管支喘息,消化不良・胃腸炎,熱性痙攣・てんかんと続く(田中,1991)4).小児科以外の診療科の疾患および外傷例は,転落,打撲,転倒,交通事故,熱傷の順に多く(末吉ほか,1993)5)これらの傾向は現在も同じである.
このように,小児の救急患者は乳幼児の軽症患者が多いが,その中に重症例が潜んでいる可能性もあり,小児科医による診察と,子どもだけでなく家族から必要な情報を収集するとともに観察を行ない,アセスメントする能力を持った看護師によるケアが必要である.しかし,日本の救急医療体制は成人患者を対象に,機能別に初期,二次,三次救急医療機関を整備してきたため,救急告示病院の約半数が子どもの診療を行なっていない現状にある(内山ほか,2002)6).
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