連載 『ケア学』の新地平 広井良典のケアをめぐる交話・10
ケアと身体
広井 良典
1
,
羽鳥 操
2
1千葉大学法経学部
2野口体操の会
pp.1118-1121
発行日 2004年11月1日
Published Date 2004/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661100569
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広井 昨今,現代人の身体感覚が失われつつあることが,いろいろな形で指摘されています.このようななか,身体論が再興し,健康志向とも相俟って,さまざまなエクササイズや身体操法のニーズが高まっています.その1つである野口体操は,なかでも独自の身体観をもっているように思います.まず,これを実践・指導されている羽鳥さんが,現代日本人の身体について実感されていることをお話しいただけますか.
羽鳥 私はある企業の中高年女性のQOLを考えるプロジェクトにかかわって3年になりますが,そこの30歳代後半の男性社員が,「僕にとっての身体は単なる道具です」とおっしゃっていました.さらに「もしかすると定年になったぐらいにやっと身体に目覚め,そのときにはもう遅いのかもしれませんね」と不安そうに話していらした.これは一例ですが,「体は道具」という感覚と,その一方で老いに伴うさまざまな不安が広がっているような感じがします.
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