現場から
ノンコンプライアンス行動を認めた成人心疾患患者への患者教育実践―患者教育において「話を聴く」ことと「患者が語る」ことの意味
石井 智香子
1
,
稲垣 順子
1
1山口大学医学部保健学科看護学専攻
pp.902-905
発行日 2004年9月1日
Published Date 2004/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661100529
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
はじめに
近年,患者の行動変容に重要なのは,医療従事者主導による病気についての知識提供や,病気の脅威感を強調するような指導ではなく,患者自らが自分の問題に気づき,問題解決に向けて主体的に取り組める患者教育であるとの考え方に大きく転換してきた1).これにあわせて患者教育では,社会学習理論をベースにした自己効力を高める方法に代表される行動科学的アプローチや,段階的変容モデル(Transtheoretical Model)による心理学的アプローチに期待が寄せられ,実際の臨床場面で活用されている1,2).しかしながら,患者教育の具体的かつ効果的な方法論は,いまだ定かではない.
本報告は,患者教育に関心を示さない,あるいはノンコンプライアンス行動をとっていた成人心疾患患者が,看護師が真剣に話を聴くこと,そして患者が自らの思い・生き方を語ることで患者の行動の変化を導いたプロセスである.これをもとに,患者教育において「話を聴く」ことと「患者が語る」ことの意味と,今後の課題について検討した.
なお,筆者(石井)は,成人看護学慢性期を担当しており,学生の臨床実習指導にかかわっている.病棟で行なわれる心臓病教室に学生の受け持ち症例も参加することから,患者教育において病棟看護師と協力体制をとってきた.そのなかでも,とくにノンコンプライアンスや,心臓病教室への参加・関心が低い患者に看護介入している.共著者の稲垣は,実施予定および実施された介入の妥当性を客観的に検討している.本稿は,このような立場からの報告である.
Copyright © 2004, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.