特集 ナースが病棟で行なう 呼吸リハの理論と実践
慢性期疾患の廃用症候群予防のための呼吸リハ
北川 知佳
1
1保善会田上病院リハビリテーション科
pp.763-769
発行日 2004年8月1日
Published Date 2004/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661100505
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はじめに
昨今,慢性の呼吸器疾患が増加の傾向にある.なかでも,その代表である慢性閉塞性肺疾患(COPD)は,2001年の全国規模の疫学調査NICE Study(Nippon COPD Epidemiology Study)1)によると,40歳以上の成人の8.5%(約530万人)と,高い有病率が推定されている.しかも,その90%は診断を未だ受けていないのが現状で,医療者が日ごろ接している高齢者や長期臥床を余儀なくされている患者が,実はCOPDに罹患している可能性は少なくない.
呼吸器障害は動作時に息切れを生じさせ,日常生活動作を障害するので,患者の活動量を著しく低下させてしまう.活動量の低下は,下肢筋群を中心とした筋機能を低下させて廃用症候群を導くため,さらに息切れが増強するという悪循環を形成し,患者のADLやQOLを低下させる.これは,その他慢性疾患のために長期臥床を余儀なくされた患者や高齢者など,活動性が低下した多くの患者も同様である.
呼吸理学療法は,慢性呼吸器疾患だけでなく,廃用症候群の悪循環に陥る可能性のある患者の呼吸機能の維持・回復にも有効である.本稿では,呼吸理学療法のなかでも廃用症候群の予防に有効な運動療法を中心に概説する.患者の退院指導にもかかわる看護師のために,入院中に指導すべき退院後の生活指導も加えた.
多くの読者のまわりには,慢性呼吸器疾患や廃用症候群による呼吸機能の衰えにより,呼吸困難を感じている患者が多くいるはずである.ぜひ本稿を,この予防と呼吸機能の維持・回復のための参考にしてほしい.
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