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はじめに
女性特有のがんである,乳がん・子宮がん・卵巣がんなどの手術後に発症する可能性があるリンパ浮腫は,いったん発症すると完治させることが難しい.また,現状では発症早期から治療をすすめている医療機関も少なく,患者は徐徐に進行する浮腫を苦痛に感じながら,日常生活を送ることを余儀なくされる.そういう意味で,非常に悩ましい術後後遺症といえる.
治療をすすめるうえでは,弾性スリーブや弾性ストッキング(以下,弾性着衣)を使用する必要があるが,それによって生活上制約される部分も出てくるため,なかには治療途中で挫折してしまう患者もいる.たとえば弾性ストッキングによる圧迫1つをとっても,「夏は暑くてはけない」「見た目が悪い」といった訴えがよく聞かれる.これは,患者自身がこの疾患について十分理解できていないことが原因であることが多い.
また,同じリンパ浮腫という病気であっても,個々の患者の年齢や身体状況,浮腫の程度は異なるため,圧迫方法は1人ひとり工夫する必要がある.「食い込んで痛みが出る」患者や,「自分1人でははけない」高齢者などの場合には,患者の特性や患肢にあった形状・サイズ・圧迫力の弾性着衣を探す努力が,医療者側にも求められる.
また,生活指導や保存的治療が十分に行なわれないままに,手術等の侵襲的な治療が選択される患者も少なくない.しかし,いくら「よい」といわれる治療法であっても,治療効果が十分出なかったり,かえって悪化した場合には,患者は再び路頭に迷うことになりかねない.治療法の決定にあたっては,選択肢の提示と十分な説明,そして患者の納得が不可欠である.
そして何よりも,治療を継続するためには,正しい知識を持った医師・看護師・セラピストが,十分な説明を行ない,患者も納得して取り組んでいく態勢が必要である.
本項では,リンパ浮腫の最も基本的な治療法である,「複合的理学療法」を中心に,保存的治療の基本的な考え方とその根拠について,患者にも説明しやすいようにまとめた.
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