特集 痴呆高齢者の転倒・転落事故は防げるか?
施設における痴呆高齢者の転倒・転落事故の発生状況と対策
須貝 佑一
1
,
小林 奈美
2
1浴風会病院精神科
2東京大学大学院医学系研究科家族看護学教室
pp.10-18
発行日 2004年1月1日
Published Date 2004/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661100375
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介護事故の大部分は転倒・転落事故という事実
高齢者の医療現場や高齢者施設で生じている事故は多種多様である.医療施設で起こり得るさまざまな医療過誤のほかに,介護行為に伴う事故や日常生活行動のなかでの大小の事故が毎日のように起こっている.いわゆる「ヒヤリ,ハット」する事故だ.しかし,実際に高齢者施設の現場で事故調査をしてみると,その実態にいくつかの特徴が浮かび上がってくる.
図1は,高齢者医療を専門とする浴風会病院全体で最近1年間に起きた医療事故のまとめである.医療過誤に相当する注射間違え,誤投薬などは報告された事故全体の42%であるのに対して,転倒・転落事故が58%と最も多いことがわかる.これを痴呆高齢者の多い介護病棟に限ってみると,事故の大半は転倒・転落事故に集中していることがわかる(図2).リスクマネジメントの観点からすると,痴呆高齢者の事故対策の力点は,まず転倒・転落対策に置かねばならないということになろう.
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