連載 糖尿病advanced care―合併症を持つ人へのアプローチ⑨
糖尿病網膜症患者の“逃げたい”思いによりそう―「こういう状況が逃げている感じになっている」
小平 京子
1
,
伊藤 ひろみ
2
,
患者教育研究会
1東京女子医科大学大学院博士課程
2砂川市立病院
pp.857-862
発行日 2006年9月1日
Published Date 2006/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661100372
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ねらい
糖尿病網膜症は,厳格な血糖コントロールによる治療の負担感だけではなく,視力障害と,それに伴う日常生活行動様式の変化や,杜会的役割遂行の危機をもたらします(→Lecture).その結果,糖尿病治療への意欲や,QOLを低下させる因子になっているという報告があります.山田ら4)は,中途視覚障害者の2人に1人は,一度は「死んでしまおう」と考えており,視力の残っている人でも,視力の悪化や完全失明の不安をもっている人が8割以上いると報告しています.そして,訓練の開始が遅れた場合,離職やそれに伴う経済的不安,離婚などの深刻な問題も抱えており,早期の自立への支援が重要性であると述べています.
ここでは,視力障害が出現し,今後の不安を抱えていながらも,具体的にどのようにしていくかの方向が見出せないでいる事例を取り上げて,その心理・社会的な理解を深め,糖尿病網膜症の進展阻止につながる関わりについて考えていくことにします.
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