ルポルタージュ 女と靴下・8
シャボテン公園の5人のおばさんたち
鈴木 俊作
pp.126-130
発行日 1979年2月25日
Published Date 1979/2/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663907312
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湯の町伊東からバスでゆられて30分,大室山のお椀をふせたような山頂ちかくに,5万坪の敷地を誇る伊豆シャボテン公園がある.ここには世界各地から集められた3500種のシャボテンが,巨大な球形の温室やピラミッド型の温室に栽培されていて,訪れる人の目を楽しませてくれる.トーテムポールのようにのっぽなもの,いが栗あたまのように丸いもの,岩かと見ちがえるように灰色をしてごつごつしたもの,そのごつごつした表面を蔦のように別種のシャボテンがはりついている.同じ緑色であっても濃淡のちがいが種類の多様を思わせ,その間に赤,黄,紫の花を咲かせて色とりどりである.
シャボテン公園とは言いながら,遠来の客を楽しませてくれるのはシャボテンばかりではない.園内に入るとすぐ,雄の孔雀が扇のような羽をひろげて私を歓迎してくれた.野放しである.傍には,まだよちよち歩きの子供たちをひき連れた雌の孔雀も控えている.この孔雀夫婦はシャボテン公園のホスト・ホステスといった格好である.見まわすとあちらこちら草むらに身を隠すようにして兎が草を食んでいる.
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