連載 産科免疫学十二話・15(最終回)
胞状奇胎はなぜ拒絶されないのか—絨毛性疾患と免疫
梅咲 直彦
1
1大阪市立大学医学部産婦人科
pp.582-589
発行日 1993年7月25日
Published Date 1993/7/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611903323
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はじめに
今から約20年前,私が産婦人科医になりたての頃,悲しいできごとに出会いました。それは新婚まもない女性が,最初の妊娠が全胞状奇胎となりその後悪性変化をおこし,強力な化学療法にもかかわらず,ついには脳転移をきたし帰らぬ人になったことです。
しかしこのような絨毛癌も最近激減し,日本では年間発症症例数が100例にも満たなくなりました。そして今世紀中にはほとんどなくなるのではないかと考えられています。その理由として,多くの絨毛癌のもとになる全胞状奇胎の発症数の減少とともに,それが比較的早期に発見され,また娩出後の管理も厳重に行なわれるようになったからと考えられています。
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