特集 会陰切開
座位分娩における児の娩出
加藤 達夫
1
1加藤産婦人科病院
pp.764-768
発行日 1990年9月25日
Published Date 1990/9/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611903243
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
はじめに
最近のお産をとりまく環境は少産少死の時代を迎えて,大変変化してきています。それは医学の進歩とともに,周産期の母体と新生児の死亡率の著しい低下によってもたらされたところが大きく,お産は女が棺桶に片足をつっこんで臨む時代から,一挙に安全なものへと変化してきました。それとともに,ともすれば結果が少しでも思ったとおりでないときは,医療に携わる者が何か怠慢だったり間違いをおかしたためと考える風潮が高まってきています。お産を行なう方法や環境に対しても,要求が高度になり,またその要求も多様化してきています。
これらの変化に対応して,産科医療者はお産を扱っていかねばならなくなってきています。そのような中で,お産への取り組み方も全体として考えていく必要があります。ですからたとえば「会陰切開」とか「座位分娩」とかいうことだけをとりあげて論ずることは,片手落ちといえるわけで,やはりお産全体の中でそれらをどのようにとらえて対応しているかということが大切だと考えます。さらに会陰切開をしないことだけが美徳のごとく論ずることはナンセンスであり,現在一般的になってきたCTGなどの手段と併せ用いた方法によって,児の予後や将来のことまでを考えた広い視野において,会陰切開という事象も判断していくべきことでしょう。
Copyright © 1990, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.