特別寄稿
病院と助産所における妊産婦ケアの実態(上)—WHOの「正常出産ケア実践ガイド」中のカテゴリーA(明らかに有効で役に立つ,推奨されるべきこと)を用いた調査から
蛭田 由美
1
,
斉藤 早苗
2
,
末原 紀美代
3
1藍野学院短期大学
2大阪府立看護大学大学院
3大阪府立看護大学
pp.339-344
発行日 2002年4月25日
Published Date 2002/4/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611902861
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はじめに
助産婦は正常な妊娠出産過程のすべてのケアに責任を持っている。妊娠出産過程での妊産婦および新生児の安全は確保されるようになったが,近年,助産婦の間で,妊産婦の主体性を尊重した人間的な暖かみのある出産のサポート,妊産婦に満足してもらえるような出産時のケアについて問う声が高まってきた。出産時のケアの質についてチェックしてみると,行なってきたケアに疑問を持っても,根拠を示せずにそのまま続けていたり,新しいことを始めたいと思っても,「何かあったときの責任は……」という組織の壁にはばまれて実現できないでいることがあるようである。日頃の疑問を明らかにしたり,新しい試みを後押ししてくれる根拠を求めている助産婦が,少なくないのではないかと筆者らは考えるようになった。
1996年,WHOは「Care in Normal Birth:a practical guide」1)という報告書を出した(邦訳は戸田律子氏によって『WHOの59カ条 お産のケア実践ガイド』(農文協)として出版されている)。この報告書の目的は,正常な出産のケアについて,一般的に行なわれているケアが,果たして有効なのかどうか,EBMに基づいて検証し,それをもとに推奨事項を設けることであった。具体的には,正常な出産のケアに関する勧告を,4つのカテゴリーと59項目(次ページの資料)の条項として提言した。
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