特集 助産婦の100年—世紀を超えるもの
産婆の近代から助産婦の現代へ
大出 春江
1
1東京文化短期大学社会学
pp.1019-1024
発行日 2000年12月25日
Published Date 2000/12/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611902540
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はじめに
助産婦がどのような助産の形をめざしていくことが,今後を切り拓くことにつながるのだろうか。そのヒントを探るために,助産の100年を振り返ることが,本論の目的である。
民俗学の報告によれば,出産とは一人で,あるいは夫や母などの家族か近隣の出産経験をもった年輩の女性などの援助を受けて自宅(ニワと呼ばれる土間や納戸)や産小屋で行なうものだった。経験ある女性たちの中でも半ば職業化した女性たちはトリアゲバアサンと呼ばれていた。こうした出産の場では資格をもった産婆が来るまで,産む女性たちは膝をついたり,天井から下げた力綱につかまるなどして,自分の娩出する力をもっとも発揮しやすい姿勢で出産をしていた1)。座産という体を縦方向に起こして産む姿勢から,横臥もしくは仰臥する姿勢に変わったのは,資格をもった産婆が村々に入ってくるようになってからである。都市の一部の階層は,すでに明治後期からこうした形を経験するようになるが,日本の各地でこうした変化が起きるのは1930年前後である2)。
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