特集 母性・父性から「育児性」へ
「愛する能力」を考える
岸 良範
1
1愛知教育大学大学院教育学研究科
pp.786-790
発行日 2000年9月25日
Published Date 2000/9/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611902485
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「愛する能力」がはじめから備わっているわけではない
親と子の間にははじめから愛があるわけではない。親が「愛する能力」を身につけるまで,そして親と子の間に成熟した「愛」が育つまでには,相互の努力とかなりの時間が必要である。時にはそのような関係の成立しないままに不幸な結末を迎え,一生を終えることさえあることは,様々な報道の中にみることができる。また親と子の間の姿が,すべてに共通ではなく,本能によってのみ支配されているわけではないことは,多くの人々によって指摘されている。
E. フロムはその著書『愛するということ』の中で,人を愛する能力は備わっているものではなく,それは習得していくべき技術であるとしている。そして愛とは,特定の人間に対する関係なのではなく,世界全体に対して人がどうかかわるかを決定する態度・性格の方向性のことであるとして,人の心理的要因にその基盤を求めている。
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