特集 周産期医療事故—母と子を守る助産婦になる
周産期医療事故の全体像
増田 聖子
1
1増田法律事務所
pp.193-199
発行日 2000年3月25日
Published Date 2000/3/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611902360
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はじめに
「この子の髪を三つあみにしたり,色々なリボンを結んであげて楽しんでるんですよ」と,ある母親は,目を細めて子供の髪をさわりながら話す。傍らのベッドに寝ているその子は1歳。生まれてからずっと,人工呼吸器から離脱できず寝たきり。「お天気の良い日にこの子をバギーに乗せて家のまわりを散歩するんです」と,別の母親はニコニコして,腕の中の子供にほんの少しずつ流動食を与えながら話す。その子は4歳。まだ首がすわらない。坐位立位不能。自発運動不能。発語もない。
これまで何度もこのような母子に会ってきた。どの子もみんな可愛く,母親は一様に優しくてたくましい。けれど,1歳になれば,「立った」「ママと言った」と,子供の急速な成長を喜び合い,4歳になれば,もうバギーには乗らず草っ原をかけっこしてはしゃぎまわったりしているころである。
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