増大号 超実践! 病理で迫るがんゲノム医療—検査から治療まで
1章 知っておくべき基本的なこと—がん遺伝子検査の特徴と,がんゲノム医療の流れ
がんゲノム医療の全体像
柳田 絵美衣
1
1群馬パース大学医療技術学部検査技術学科
キーワード:
がんゲノム医療中核拠点病院
,
がんゲノム医療拠点病院
,
がんゲノム医療連携病院
,
精密医療
,
がん遺伝子パネル検査
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がんゲノム医療連携病院
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精密医療
,
がん遺伝子パネル検査
pp.1034-1039
発行日 2025年10月15日
Published Date 2025/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.048514200690101034
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がんゲノム医療とがん遺伝子検査
2015年1月30日に,一般教書演説のなかで当時のアメリカ大統領であるオバマ氏が発表した「プレシジョン・メディシン・イニシアティブ」(Precision Medicine Initiative)は,次世代の医療のあるべき姿と考えられるようになった.これまでの医療は平均的な患者向けにデザインされていたのに対し,プレシジョン・メディシン(精密医療)は,遺伝子,環境,ライフスタイルに関する個々人の違いを考慮して,個々人に最適な疾病の予防や治療法を確立するものである.
これまで,がんに関する遺伝子関連検査はコンパニオン診断として行われてきた.遺伝子変異に基づく個別化治療は決められた臓器に発症したがんにおいて,1つの遺伝子の異常に対して治療薬を選択する.例えば,乳がんにc-erbB-2の変異が見つかればトラスツズマブ(trastuzumab)を選択し,治療に用いることは可能であるが,肺がんで同じ遺伝子変異が見つかってもトラスツズマブを選択することができない.わが国では,がん発生臓器ごとに選択できる薬剤が決められており,他臓器では使用することができない.また,それ以前に肺がんにおいてc-erbB-2変異の検査を受けること自体,わが国の保険医療では認められていなかった.

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