今月のニュース診断
子どもに対する実験的医療をどう考えるか
斎藤 有紀子
1
1明治大学法学部法哲学・生命倫理
pp.922-923
発行日 1999年11月25日
Published Date 1999/11/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611902278
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筋ジストロフィーの遺伝子治療
9月1日,神戸大学医学部付属医学研究所国際交流センターの松尾雅文教授は,筋ジストロフィーの遺伝子治療を学内倫理委員会に申請した(毎日新聞9月2日「筋ジストロフィー合成DNAで軽症化:遺伝子治療実験を申請」)。
筋ジストロフィー(以下,筋ジス)は,遺伝子の変異によっていくつかの病型に分かれているが,なかでもデュシェンヌ型(以下,D型)と呼ばれるタイプは,他と比べて進行が早く,しばしば「重い」と形容されてきた。根治につながる予防法・治療法・特効薬がなく,患児だけでなく親・きょうだいの遺伝情報にも関わる可能性があるため(注:すべてが遺伝によるものでなく,孤発例もある),病名を告げ,予後の説明をする際には,聞く側の家族はもちろん,医療者側も少なからぬストレスを抱えてきたと言われている。深刻な説明はときに回避され,患者・家族が,病名や病態をはっきり知らされないまま,不安な状況におかれることもあるという。
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