特集 知らないではすまされない不妊治療
「不妊」は文化の問題である
鈴木 良子
1
1フィンレージの会
pp.229-233
発行日 1999年3月25日
Published Date 1999/3/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611902130
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私のかかえる「不妊」の現場
横隔膜のあたりにコールタールのような黒い物質がべったりと張りついている。ああ,これは私の血だ。じわりじわりと染み出た血が,血の池を作っている。荒れ果てた土の上にたくさんの血だまりができている。流れ出た血が誰からも気づかれることなく,大地に吸い取られ,風化していこうとしている……。
ここ1〜2か月,私はこんな心で過ごしてきたようである。「ようである」というのは,自分でもこれほどまでに血を流していると気づいていなかったからだ。心理療法の一つである“フォーカシング”(フォーカス=照準を定める意。漠然とした体の感じに注意を向け,そこから気づきを得る方法)という手法を用い,初めて出てきた心象風景だった。
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