Medical Scope
妊娠後半期の血液検査データの読み方に注意しよう
島田 信宏
1
1北里大学医学部産婦人科
pp.727
発行日 1998年8月25日
Published Date 1998/8/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611901999
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妊娠中には血液検査で多くの病態をチェックしています。しかし,私たちはその検査結果,すなわち検査データを読むときに注意しなくてはいけない多くのポイントがあることを知っているでしょうか?知ってはいても,ときどき忘れてしまって,つい妊娠していない成人の正常値を頭に浮かべて,それと比較して判断してはいないでしょうか?妊娠後半期には血液の循環血液量がとても増えてきます。しかし,この現象は血液の全成分が均等に増えるのではなく,血漿成分だけが著しく増加して,ちょうど水で薄まった感じになるので俗に水血症と呼ばれています。このために血液中のある成分を検査すると,妊娠していない成人の正常値とはずいぶん違った値が出てくることになりますが,決してそれが異常値でない場合が多いのです。
たとえば,妊娠中の貧血は鉄欠乏性貧血だといわれています。水血症の状態がもっとも強いのが妊娠31〜32週なので,もし血液検査を行なうのをあまり急がないなら,この時期以後にしたほうがよいでしょう。殊に貧血の検査は血中のヘモグロビン(Hb)値(濃度)だけで終わってはいけません。ひとつの赤血球のなかにあるHbの量の平均値を検査してみないと,貧血の診断はできません。血液全体のHb量をみると,血液は薄まっているので正常の妊婦でも8.0〜9.0g/dlということが多いのです。こうしてみると,本当に貧血の妊婦は現在の日本にはほとんどいません。
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