Medical Scope
妊娠後半期の血液濃縮
島田 信宏
1
1北里大学医学部産婦人科
pp.635
発行日 1998年7月25日
Published Date 1998/7/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611901980
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すでに何回か小欄でも述べたように,妊娠後半期には正常妊婦では血液中の水分,すなわち血漿量が40〜50%も増加するために全体の循環血液量は薄められた分だけ増加します。この現象のことを水血症というのですが,妊娠を維持していく上にも,胎児をよく発育させるためにも,分娩時の出血のためにも大変有用で,また必要なことです。
巨大になった妊娠子宮に血液を送り込むには血液量が増加しなくてはなりません。血球成分もそのために少しずつは増えているのですが,それよりも早く水分の血漿が増加してしまうのがこの水血症のメカニズムです。このために薄くなって水流,血液の流れが早くなり,絨毛間腔では物質交換も代謝も亢進されて胎児は栄養物をよくとることができます。したがって,初体重が3,500gというようなよく発育した胎児は,血液が血漿で薄まった母体にできるのです。
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