原著
妊娠後半期に於ける母體胎兒間血液性状の相關々係に就て
田中 益雄
1
1三重縣立醫科大學産婦人科教室
pp.339-344
発行日 1951年9月10日
Published Date 1951/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409200526
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緒論
胎兒は子宮内に於て生長發育に要する物質を悉く胎盤を經て母體血液に仰ぎ榮養として蛋白脂肪含水炭素均類水分を要する事勿論であり,之等の物質が母體血液より胎兒血中に入るに當つては瀰散又は滲透壓に依ると言われている。瀰散作用によるものは酸素炭酸瓦斯であり滲透によるものは水分均類含水炭素アミノ酸ビタミン類であり膠質類例えば蛋白質の如きものは絨毛上皮の酵素作用により分解して再び胎盤中にて合成し胎兒の榮養となると言われている。實際に人類では子宮内に於てどの程度の血中蛋白質水分均類含水炭素等の差を持つて母體と胎兒の榮養状態が保たれているかを測定する事は困難である。妊娠血液に就ては,Nasse.Spiegllerg u.Gescheidler以來提,岩津,館,志多,鈴木等の研究に依り血漿量増加に依る生理的水血症を呈すと言われている。松本,近藤,石川等は硫酸銅法に依り妊娠は非妊娠に比し血液血漿共低比重を示すと,又余の妊婦血液水分量消長に關する研究(第3回日本産婦人科學會發表)で妊婦は非妊婦に比し貧血性水血症を呈し妊娠中期に於て最高水血症を示し10ヵ月で3ヵ月の値にまで回復する。
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