特集 証拠にもとづく助産ケア
証拠に基づく医療とケア
福井 次矢
1
1京都大学医学部附属病院総合診療部
pp.273-277
発行日 1998年4月25日
Published Date 1998/4/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611901908
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はじめに
産婦人科学と臨床疫学の分野で仕事をする者にとって,1989年は記念すべき年になるかも知れない。M. E. ChalmersとM. N. C. Keirseの編集になる『Effective Care in Pregnancy and Child-birth』1)が出版された年だからである。
本書は,欧米の産婦人科医と臨床疫学の専門家が英知と多大なエネルギーを傾けて,妊娠と分娩にかかわる医療行為の有効性を科学的な手法で評価した,臨床医学全般に大きな影響を与える教科書である。第一章では,医療行為の有効性を評価するうえで考慮しなくてはならない臨床疫学の原則や社会科学的・経済的側面に関する総論が明確に記述されている。第2章以降,医師によってしばしば意見の異なる医療行為の妥当性につき,過去に報告された膨大な研究データがどの程度信頼できるのかを臨床疫学的原理に則って,客観的に評価している。つまり,個人の臨床経験から得た印象や根拠のない信念を排除して,あくまでも確率統計学的に信頼できると判断されるデータを特定しているのである。
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