コーヒーブレイク
痛いうちは歩ける証拠
寺田 秀夫
1
1聖路加国際病院内科/昭和大学内科
pp.774
発行日 1999年7月15日
Published Date 1999/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542904122
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30年来慢性関節リウマチを患い,肘・腕・指関節さらに趾関節の変形・硬直による機能障害と毎日の痛みに苦しむ現在66歳の主婦.数年前に趾関節の高度な変形(claw foot)のため,歩行も困難になり某大学リハビリテーション科のM教授から,10本の全趾関節の切開整形手術を受けた結果,ある程度歩行も可能となり,本人はもちろん家族も人喜びで今日に至っている.しかし数年前から足底部の,特に足球部の皮膚の角化(角質皮膚炎keratodermatitis)を起こし,再び歩行時の疼痛が強くなり,毎月1回皮膚科外来で角質層の切開剥離を続けているが,本人は将来歩けなくなるだろうかという危惧の念に馳られて,気持が落ち込む日も少なくなかった.
先月,皮膚科外来で治療をうけた際,いつもの某教授は「いつでも治療にいらっしゃい.痛いうちは歩けるという証拠ですから.車椅子を使っている人は痛くないわけですよ」と言われた.それ以後その患者は気持も明るくなり,毎日を有意義に過ごし始めている.この医師の一言が長年リウマチの苦しみに耐えて,ややもすると気分の暗くなり易いこの患者にとって,素晴らしい励ましの言葉となったことは間違いない.
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