連載 続クロストーク医療裁判・15【最終回】
突然の証拠保全に驚かないために―カルテの証拠保全
宮川 広臣
1
,
畑中 綾子
2
,
長谷川 剛
3
1東京地方裁判所
2東京大学公共政策大学院
3自治医科大学附属病院医療安全対策部
pp.336-340
発行日 2009年4月1日
Published Date 2009/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541101433
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本連載は65巻3号~66巻2月号に掲載した好評連載の続編である.裁判実務・法律・医療分野に携わる三者が,最高裁判決を事例に論点を解説し,多角的な見方を提供してきた.最終回では,民事裁判にあたり医療機関側が最初に裁判所と接触する局面とも言える「証拠保全」手続について取り上げる.
医療機関側には,実施の1時間程度前にしか知らされず,突然,裁判所と患者側の弁護士が医療機関を訪れ,医療関係記録の捜索的な行為に及ぶことから,証拠保全手続の実施自体に対して反発もあるだろう.しかし,証拠保全が実施されたからといって,裁判所が医療機関側の責任を認めたことにはならない.むしろ,医療関係記録の存在と内容が患者側に明らかになることにより,患者側の誤解や不審が解消され,その結果裁判が起こされずに解決することもあるし,医療裁判となった場合にも,証拠保全によって客観的な内容が確認・保全されている資料に基づく議論が可能となることから,決して医療機関側に不利なことではない.証拠保全の実施に当たっては,手続を主催する裁判所から,そうした証拠保全手続の意義や効果が説明され,医療機関側の協力の下に円滑に実施されるようなことも多くなってきたと指摘されている.今回,証拠保全の意義や具体的な実施手順について論じたい.
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