特集 CTGに強くなる
FHRモニタリング:フィータル・ディストレスをどこまで診断できるか?
武久 徹
1
1武久産婦人科医院
pp.196-200
発行日 1998年3月25日
Published Date 1998/3/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611901893
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はじめに
分娩管理の目的の一つは,新生児死亡と罹患の予防である。新生児罹患の中で最大の問題である脳性麻痺の原因の約9%は,分娩中の胎児低酸素症であることが,Nelsonらの調査で明らかにされている(NEJM 315:81,1988)。したがって,脳性麻痺の大部分は適切な分娩管理が行なわれても防止できない反面,分娩中の高度胎児低酸素症が原因の重要な新生児罹患や死亡があることも事実である。
分娩前,分娩中の胎児低酸素症を診断する目的で胎児心拍数(FHR)が監視される。主な方法は,聴診法と電子的FHRモニタリング(EFM)である。分娩監視をEFM,聴診法のいずれで行なっても新生児予後は不変であることが,メタ分析で明らかにされている(Obstet Gynecol 86:613,1995)。しかし,これらの研究で採用された聴診法は,かなり頻繁に行なわれた聴診法(表1)で,「産科看護者対妊婦」が「1対1」で,ほとんど付きっきりで行なわなければならないため,忙しい施設では聴診法による監視は,ほとんど実行不可能(AJOG 168:63,1993)なため,EFMによる分娩監視しか残されない。しかし,EFMは安心な結果が示された時の信頼度は高いが,心配な結果が現れた時の信頼度は低いことも,多くの研究で明らかにされている。
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