今月の臨床 分娩の多様化とリスク管理
分娩様式とリスク管理
1.自然分娩とFHRモニタリング
水上 尚典
1
1北海道大学大学院医学研究科病態制御医学専攻生殖・発達医学講座周産期医学分野
pp.1424-1427
発行日 2002年12月10日
Published Date 2002/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409904793
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はじめに
分娩そのものは特に疾病ではないが,適切な医学的介入なしでは多くの命(母児ともに)が妊娠・分娩を契機として失われる.例えば,アフリカ諸国には妊産婦死亡が10万分娩あたり500〜1,000名(本邦では10名未満)に達する国・地方が多数存在する.そのような国々の周産期死亡率は定かではないが,本邦の100倍近くに達するのではないだろうか.これらのことは大多数の妊婦が無事出産し,元気な児を持てるためには適切な医学的介入が必要であることを支持している.しかし,医学的介入には時間とコストがかかる.できればそのような介入なしに元気な児を持てるのが理想である.しかし,これは絵にかいたモチのような話で,疾病は必ずある一定の頻度で存在する.病胎児を早期に発見し,その病気が後遺症を残さないように早期に適切な医学的介入を行う.これが周産期医学のこれまでの発展の歴史であった.リスクの高い胎児を発見するためにはスクリーニング検査が必要である.当初,脳性麻痺や精神運動発達遅延の多くの症例が分娩時の低酸素血症によるものと考えられた.この分娩時低酸素血症のスクリーニング法として考案されたものがいわゆる分娩監視装置による持続的胎児心拍パターンモニターである.
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