研究・調査・報告
退院を拒否し続けていた妊婦の不安状況の分析—カプランによる危機の4つの発達段階を用いて
野澤 美江子
1
,
新巻 真由美
2
,
二渡 美幸
2
,
岡部 恵子
1
1山梨県立看護短期大学
2自治医科大学附属病院
pp.412-419
発行日 1996年5月25日
Published Date 1996/5/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611901474
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はじめに
4回の習慣性流産の後,頸管縫縮術を受け,一度めは生児を得たものの,二度めは妊娠29週で早産,児は生後死亡したという体験をもつ妊婦が,七度めの妊娠で入院してきた。そして,妊娠12週で頸管縫縮術を受け,その後の妊娠および術後経過は良好で退院可となったが,妊婦は分娩までの入院継続を希望し入院生活を続けた。しかし,妊娠26週頃より精神的に不安定となり,その状況が次第に増悪し,妊娠継続が困難と診断され,入院161日目(妊娠33週目)に,帝王切開術で分娩するという経過となった。
その間,精神の安定をはかるための看護を計画し実践したにもかかわらず,精神的不安定の回避はできなかった。なぜ,行なった看護が効果をもたらさなかったのか。この事例は,課題を多く残し続けていると思われた。そこで,この妊婦が精神的に不安定な状況となった場面のいくつかを取り出して検討することで,妊婦の思いを分析・考察した。
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