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特集 現代社会と家族—諸病態との関連から
核家族の「成熟拒否」と子どもの思春期危機—食行動異常,窃盗癖,家庭内暴力,登校拒否
Immature Nuclear Families and Adolescent Crisises
石川 元
1
Gen Ishikawa
1
1浜松医科大学精神神経科学教室
1Department of Neurology and Psychiatry, Hamamatsu University, School of Medicine
pp.585-591
発行日 1989年6月15日
Published Date 1989/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405204718
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I.はじめに
ここで取り上げる思春期危機の4症例,食行動異常,窃盗癖,家庭内暴力,登校拒否はいずれも家族療法の対象となる現代日本における病態と考えられるが,家族構造に共通点を有している。4症例とも父親の原家族(父親が生まれ育った家族)が患者の核家族に様々な点で多大な影響を与えており,核家族は患者の発症までの間,そうした状況に逆らうこともなく経過していた。このうち3症例については実際に家族療法を施行しているが,作業仮説を裏付けるように,核家族と原家族のコミュニケーションを断つ治療戦略が有効であった。
ここでは,原家族からあえて独立しようとしない状態を,核家族の「成熟拒否」と名付け,個人における同様の病理と同一線上にある,一種の社会病理として位置づけることにする。
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